SaaSベンチャーで働くエンタープライズ部長のブログ

SaaSベンチャーでエンジニア→プロダクトマネージャー→エンタープライズ部長として働いています。

SaaSのエンタープライズ組織を立ち上げた時の組織構成

9月にプロダクトマネージャーをやめエンタープライズ部の部長になってから3ヶ月が経ちました。エンタープライズ部は従業員1000人以上の企業向けにサービス提供する部として発足しました。戦略、業務、組織を整備してきましたが、本日は組織について記しておこうと思います。

組織設計の考え方

組織は基本的に分割された単位で1つの目標を追えるようにすることがシンプルになります。システムアーキテクチャ設計では「単一責任の原則」という言葉があり、1つのコンポーネントに1つの役割を持たせるべきという考え方です。組織作りもこれに似ていて、一つの責務だけを負うことを意識しました。

着任時には私以外にアカウントマネージャー5人、プリセールス1人が専任、カスタマーサクセス、マーケティングインサイドセールスがそれぞれ兼務で1人ずついる状態でした。

9人は少し1つのチームとしては多いですし役割も入り乱れています。一方で細かく分割しすぎても横の連携ができません。商談創出、アカウントマネジメント、導入支援の3グループに分けて責務を分割しました。

商談創出グループ

商談創出グループには兼務のマーケティングインサイドセールスをアサインし、部専属メンバーをグループ長としました。ミッションは商談創出。ターゲットとしたいカテゴリの企業群の商談創出を担ってもらっています。

マーケティングはリード創出数、インサイドセールスは商談創出数が目標になりますが、チームとして追う目標は商談創出数に一本化しました。マーケティングには逆算したリード創出の目標数値も持たせます。

リード創出は、インバウンドリード創出のSDRと、アウトバウンドリード創出のBDRがあります。マーケティングはSDRを管轄とし、BDRはインサイドセールスに責務を持たせました。(インサイドセールスはSDRで創出されたリードへの商談創出もやります)

アウトバウンド活動は架電だけでなく、リード創出のために様々な施策が考えられます。「エンタープライズ アウトバウンド」で検索するだけでも、手紙を送る施策など様々なものが出てきますし、工夫のしがいがあります。

エンタープライズ事業の予算数値を考えたとき、商談創出におけるナーチャリング活動はすぐさま取り掛かり、ここは止めてはいけないと考えました。エンタープライズ商談は長い時間をかけて行うものです。商談化してからも最低半年は見込まなければ成約に至らず、逆算すると来年度の成果を作るためにはすでに今年度の3クォーター(10-12月)中に商談創出を手掛けなければいけないと結論づいたためです。

アカウントマネジメントグループ

いわゆるセールスチームです。より力を発揮するためにインダストリーカットの組織にしました。1人に3-5程度の担当業界を持ってもらい、それらの商談を担当してもらいます。業界特有の課題や現在のトレンド、特有の会計処理などのナレッジを貯める試みとして、インダストリー毎の勉強会も持ち回りでしてレポートを記載しています。(インダストリーの分担にツッコミはあると思うのですが、個々人の特性や負荷を考慮して決めました)

インダストリーカットを選択した最も大きな理由は、「顧客の課題を、顧客の言葉で理解できる様になりたかったから」です。業界特有の課題はありますし、ドメイン理解を深めることで顧客の課題をより理解できます。何より顧客はエキスパートと取引したいものです。先方の業界理解はしてから商談に臨む事が望ましいものです。

業界学習用の書籍とレポートのイメージ

アカウントマネージャーが5人程度の段階でのインダストリーカット移行の意思決定は少し早かったかもしれませんが、全員が満足している施策です。

ただしプロダクトカットの場合と比べて、どの製品であっても提案する必要があり、身につける製品知識の幅は広くなる点が難点ではあります。全員頑張ってキャッチアップしてくれていますが、製品が増えていく段階においてはプロダクト内容理解のイネーブリングの仕組みが必要になると思われます。

余談ですが、アカウントマネジメントのチームは以下のような様々なタレントが揃っていて、色々と教えてもらうことが多くあります。

OracleMicrosoftSalesforceなど外資IT企業で10年以上働いてきたベテラン

ソフトバンクでロボットのPepperを世界で一番売った記録を持つ人

Salesforceインサイドセールスもエンタープライズ営業も行ってきた人

・誰から学ぶわけでなくスタートアップでエンタープライズ営業を行ってきた人

導入支援グループ

プリセールス

プリセールスとサクセスを統合していることが特徴です。分けるほど人数がいなかったことはありますが、責務と目標を共有したかったという背景があります。プリセールスは複雑な業務やシステム連携の論点を解消する砦としての役割です。サクセスは最後に受け持つので論点が残っていると最も大変です。

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過去には「導入コンサルタント」という名前にしていましたがSaaS企業らしく職種名を「プリセールス」に改名しました。

システム開発をしていた経験では、前工程で論点が残っていると本来の2倍の労力を割いて後工程で解決する必要があります。論点を残したままサクセスチームに案件を流すと本来の何倍も労力を費やして解決しなければいけないので、プリセールスとサクセスの目標設定を同一にして論点を細やかに潰す様にしています。

プリセールスの目標設定をよりセールス的に攻める方向におくか、導入時のサクセスに重きを置くかは状況と個社の考えによりますが、現在は後者においています。エンタープライズ市場を念頭に置いた際、製品機能が成熟前の現在は、丁寧な業務整理と機能Fit/Gap検討をすることがプロダクトフィードバックを回して今後の資産になると考えたからです。

より製品が成熟してPMFが進み、ディストリビューションが効果的に進む様になればプリセールスの目標をセールス組織に近づけるという選択肢もありうるでしょう。

カスタマーサクセス

ワークフローやビジネスカードなど、複数の部門にまたがる製品なのでカスタマーサクセスは多くの部署と連携しながら利用実績を見ていく必要があります。基本的にエンタープライズ企業向けにハイタッチサクセスの提供となり、オンボーディング期間も通常2ヶ月程度のところが半年程度になるなど長期間に渡ります。

また、他製品にご興味を持っていただいた時にすぐに相談していただけるような信頼関係を築くことも重要です。クロスセル商談は、場合によっては導入時のアカウントマネージャーと連携しながらご提案もします。顧客からすると、導入時の担当にもいてもらった方が話がしやすいということもあるでしょうから、THE MODELの分業性にこだわり切らず意図的に弾力的な運用にします。

終わりに

エンタープライズ部はTHE MODELでの役割を基盤としながら、意図的に崩しています。THE MODELはウォーターフォール型のビジネスプロセスであり、論点が完全に解決されて次工程に行くことを前提としてるので、論点が残りやすい環境では向かないと私は考えています。

マーケティングのリード創出で論点が残るなら、インサイドセールスとも連携するようにグループを同一にしています。また、プリセールスで論点が残りそうならカスタマーサクセスと連携しやすいようにグループを同一にしています。

さらに組織図には表れていませんが、論点が多そうな導入支援ではプリセールスとアカウントマネージャーがチームを組んで導入前の検証プロジェクトを行うことなどもしています。すなわち不確実性のある環境では、前工程と後工程の「のりしろ」を作っていくことがリスク対応になり得るとの考えです。

状況によってどんどんチーム体制は変えていこうと考えていますし、自分の役割を多く移譲していくことがスケールに大事だと感じます。

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職種JD

【バクラク】フィールドセールス (大手企業担当) / 株式会社LayerX

【バクラク】プリセールス(エンタープライズ) / 株式会社LayerX

【バクラク】カスタマーサクセス(エンタープライズ) / 株式会社LayerX