SaaSベンチャーで働くエンタープライズ部長のブログ

SaaSベンチャーでエンジニア→プロダクトマネージャー→エンタープライズ部長として働いています。

プロダクトマネージャーをやめる

9月から異動でバクラクのプロダクトマネージャーの職種をおりることとなりました。異動先は大企業向けビジネスを推進するエンタープライズ部を立ち上げてそこの部長になります。エンタープライズ向けの機能開発マネジメントはしていたものの、ビジネス全般の管掌となり立ち位置が大きく変わりました。

もともとエンジニアからプロダクトマネージャーになり、エンジニアリングマネージャーも務め、と開発畑のキャリアを歩んできていたので晴天の霹靂だったのですが、意外とビジネス職になっても役立つ経験が多いので書いてみます。

着任1ヶ月で行った現状把握

まず開発職からビジネス職への異動ということで状況理解から始めました。理解する構造は組織・業務・戦略の3点です。

メンバー理解を深める(組織)

何はともあれ人から、ということでチームや組織理解からしました。部自体は10人弱で、専任メンバー、兼任メンバー全員と1on1をして相互理解を深めました。全員に聞いたのは以下4点です。

  • 最近の仕事は何をやっていますか
  • 仕事の満足度は100点満点中何点ですか
  • キャリアパスとしてどのようなことを志向していますか
  • 私に期待することはありますか(または不安なことはありますか)

この辺りの1on1のフォーマットはエンジニアやプロダクトマネージャーとの1on1を通して磨いていったものです。「エンジニアリングマネージャー」について型化された知識が世に出ているため参考にしています。また、207さんが公開されている1on1フォーマットも参考にしています。

207で1年間磨き続けた1on1のフォーマットを公開します|207株式会社

面談を通して嬉しい誤算だったのは「テクノロジーに詳しい人がボスにつくことはほぼなかったので、技術について教えて欲しい」 という声が多かったことです。ビジネス職では必ずしも技術に興味がある人ばかりではない、と思っていたのですが、知るきっかけが少ないだけだなと認識を改めました。

常に発見を議論する機会を作る(業務)

SaaSビジネスにおいては事業開発フェーズとディストリビューションのフェーズが存在していると考えています。届け方を探索するフェーズと、いかに素早く強力に届けていくかのフェーズです。

エンタープライズ部はまだ事業開発のフェーズだと結論し、日々夕会で1時間議論することにしました。今日あった商談は何で、どのようなペインをお客様が感じていたか、今後どのようなペインが生まれると感じるか、プロダクトとして足りていない機能は何かなどを議論し合うことで届け方をチーム全体で探索するようにしました。毎日1時間は長いかと思いましたが、思ったより知見の共有とネクストアクションにつなげることも多いので現在も継続しています。また日々顔を合わせて話すとチームで信頼感は生まれます。リモートワーク時代だからこそ重要な取り組みかと思います。

事業をプロダクトとして捉えて構造化する(戦略)

SaaSの事業は構造化しやすく、ファネルの理解からはじめていきました。マーケでリードがいくつ入ってきて、インバウンド・アウトバンド比率は何対何か。インサイドセールスでの商談化率、フィールドセールスでの商談成功率、サクセス案件は人員に対してどの程度あるか、エンタープライズにおける商談リードタイムはいくつかなどの事実を確かめて理解していきました。

Tableauを使って商談全体について、お客様の規模ごとに商談リードタイムの箱ひげ図を作って状況把握したり、従業員数と契約金額を軸にして散布図を書いたりして全体観を把握し、注力領域を定めていきました。

また、重要なのが短期と長期の時期感です。エンタープライズ商談はお客様の論点の大きさから、タッチポイントを持ってから契約に至るまで数年かかることもよくあります。その状況下で年度内の予算を数字偏重で引いてしまうと、商談化しやすいお客様だけにアプローチして予算は達成できるが、ずっとPMFしていない領域のお客様に届けられないというジレンマが発生します。

このような問題意識は1on1の中でもメンバーから聞いていました。短期を志向するなら短期の目標を作ること、長期を志向するなら長期の目標を作ることを念頭に予算や目標を作り直しました。長期目標、短期目標のポートフォリオを組んで、大きな目標は長期の時間軸だが、短期的なトラクションは短期目標と連動するようにしました。

羅針盤(アウトカムとロードマップ)を作る

着任1ヶ月ほどした頃に丁度、事業部の経営ロングミーティングを控えていたので、エンタープライズ部の羅針盤として、数十枚のスライドを作りました。今後の戦略、組織体制、大きな目標の方向性について定めた内容です。

部内での頭出しでは、大きな方向性はトップダウン的に共有する一方でメンバーからフィードバックをもらって一度作り直し、納得感があるものにしていきました。1on1をしていて相互理解を務めていたので、比較的率直にフィードバックをしてもらえたようには感じています。

概ね経営ロングミーティングでも承認を得たので、まず2023年度10月からの下期でトラクションを生み出すことが重要になっていきます。

おわりに

ポジションが大きく変わる異動ではありましたが、事業自体をプロダクトとして捉えることで構成要素の分解、アウトカムの見定め、ロードマップの定義などをしてメンバーからフィードバックを得ながら決めていきました。

プロダクトマネージャーの経験で最も活かせていることは意思決定の経験です。プロダクトマネージャーは周りを巻き込む意思決定を日々していく職種であり、早く決定して、情報収集をして修正するということに慣れていたことは役に立っていたと思います。まだロードマップを定めただけで、アウトカムの実現をしてこそなのでこれから結果を出しにいこうと思います。

できたばかりの部で10名もいないチームです。ご興味ある方はぜひカジュアル面談をご連絡ください。

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