SaaSベンチャーで働くエンタープライズ部長のブログ

SaaSベンチャーでエンジニア→プロダクトマネージャー→エンタープライズ部長として働いています。

Devcon5で見た面白いプロジェクト

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devcon5 エントランス

10月8日〜11日まで大阪で行われたEthereum Devconに参加してきました。面白いプロジェクトをいくつも見つけたのでざっと紹介していきます。

verX

verx.ch

Ethereumのsolidityコントラクトの形式検証用ツールです。solidityのテストツールはtruffleなど多くありますが、形式検証を簡単にするためのツールです。以下のような仕様記述言語で検証したい仕様を記述します。

property property_name {
    always(property-formula);
    (extra-predicate-1);
    (extra-predicate-2);
    ...
    (extra-predicate-n);
}

例えば、always演算子は常にそれが成り立つ事を保証する。例えば、コントラクトAのa変数が2より大きい場合、always(A.a > 2)を記載します。使い方は以下のように、継承コードをフラット化したsolidityファイル、デプロイスクリプト、仕様記述言語SPECの3つを引数にして実行します。

usage: client.py [-h] -f FLATFILE -d DEPLOYER -s SPEC [SPEC ...] -o OUTPUT
                 [-p PARALLEL]


FLATFILE is a Solidity flat file (no import statements) that contains the contracts to be verified.

DEPLOYER is a deployment script, defining how the contracts are deployed and initialized, as defined in Quick Start.

SPEC is a file that defines a property to be verified. The property must follow the syntax defined in the Specification Language.

Client — VerX documentationより

ChainLink

chain.link

ChainLinkはとても有名なプロジェクトです。チェーン外の内容をどのように信頼するかというオラクル問題があります。こちらに取り組んでいるプロジェクトであり、オラクルを作るための技術開発をしていました。

デモでは、ETH / USDの価格オラクルを作っていました。十数種類のAPIから価格を取ってきて、それらの中央値をオラクルとしていました。

価格だけに限らず、他にも使えるのかとブースで聞いたら"Anything."と答えていただいたので、なんでもオラクルを作れるようです。

Aleth.io

https://developers.aleth.io/apidevelopers.aleth.io

Consensysのalethioも有名なプロジェクトです。Ethereum上のデータを取得できるAPIやレポートを提供しています。APIではトークンの転送記録などが取得でき、レポートではDefiのビジュアライズマップなどを提供しています。

こちらは開発者向けのポータルです。

oasis

oasislabs.com

OASIS LABも興味深いプロジェクトです。WASIを採用して、WASMで動かせるブロックチェーンです。RustなどWASM対応言語でコンパイルできると言っていました。また、サインインするとERC20のようなトークンについてはもうデプロイするキットがあり、簡単に試せるようになっています。

NightFall

github.com

EYが開発しているゼロ知識証明の技術です。zk-snarkを用いて、ERC20やERC721を匿名的に取引できるようにする技術です。おそらくパブリックチェーンで価値の移転はしたいが、取引履歴を隠したいというニーズは出てくるでしょう。特に、STOなどで金融商品がパブリックに取引されるようになるとプライバシーの点でニーズが高まるはずです。

Centrifuge

centrifuge.io

Centrifugeは金融のサプライチェーンを手助けするプロジェクトです。この中のTinlakeというプロダクトでは、現実世界の資産(の権利)をNFTにしておき、それを担保としてステーブルコインでレンディングを行います。

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tinlake

https://centrifuge.io/technology/tinlake より

ユースケースをいくつか紹介しており、NFTとステーブルコインを組み合わせたプラットフォームとしてプロダクトを作っています。

まとめ

今回はあまり知られていないものを紹介する趣旨で海外のプロジェクトを紹介しましたが、LayerX, BUIDL, ALISなど日本勢も発表して活躍していました。Devcon5での数多くのプロジェクトが紹介されましたが、Ethereumエコシステムの拡大が見られた一方で、Ethereumの弱点を踏まえて新たなブロックチェーンを開発しようとしているプロジェクトなども見られ、今後の期待が強くなりました。