SaaSベンチャーで働くエンタープライズ部長のブログ

SaaSベンチャーでエンジニア→プロダクトマネージャー→エンタープライズ部長として働いています。

「Ethereum Community Fund」創設発表イベントに行ってきました〜Ethereumエンジニアが必要とされそう〜

3月29日、「Ethereum Community Fund」創設発表イベントが東京で行われました。

Ethereum Community Fundとは、Ethereumのインフラ整備やDappsの普及のためのファンドとのことです。

イーサリアムを支援する6つのプロジェクト——Cosmos、OmiseGO、Golem、Maker、Global Brain Blockchain Labs(GBBL)、Raiden——は先ごろ共同で、イーサリアムのインフラの整備や非中央集権型アプリ(dApp)の普及を意図したファンド「Ethereum Community Fund(ECF)」の創設を発表している。

thebridge.jp

たまたま参加させていただけて、イベント内容についてソーシャルシェアがOKということなので、少し記載します。

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当日はVitalik Buterinのスピーチ、Ethereum Foundationの宮口 礼子さんによるブロックチェーンによる人身売買の対応策や、フェアトレードの可能性などのお話がありました。(写真はEthereum Foundation 宮口 礼子さんのスピーチ)

イベントで見えたこと-1.スケーラビリティ問題に対応する技術開発の推奨

現在のEthereumのスケーラビリティは、1秒間に概ね15トランザクションまでと言われています。

一方で、Dapps市場は非常に大きくなっており、早く処理してもらうための手数料高騰が問題となっています。

以下はEthereumのトランザクション量の時系列チャートです。

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https://bitinfocharts.com/comparison/transactions-btc-ltc-eth.htmlより

12月にCryptoKittiesゲームが発表されるや否や、とんでもない量のトランザクションが増加したことがわかります。

私も2月頃にEthereumを用いたゲームであるCryptoKittiesで遊んだときは、売買や繁殖といった一つのアクションを起こす度に200円程度のEtherが必要になりました。

ブロックチェーンを用いたサービスを開発する場合、オフチェーンとオンチェーンの比率をどのようにするかが最も頭を悩ませるところと思います。

非中央集権というところを重視するならば、全てオンチェーンのほうが取引が透明になりますが、そうするとオンチェーンで取引するための手数料が都度かかってしまいます。

オフチェーンの場合、中央集権的になってしまい、ハッキング攻撃ポイントが生まれるなどの諸問題があります。

この解決のために、いくつかのソリューションが存在します。

  • オフチェーンで処理する(Raiden)

Raiden Networkはオフチェーン処理である程度取引を行い、バッチ的にブロックチェーンに書き込むことで記録されるトランザクション数を減らします。

  • チェーンの階層化(Plasma)

ブロックチェーンに対して階層的にブロックチェーンを作成し、メインとなるブロックチェーンに書き込むのはバッチ的に行い、書き込む手数料を減らす技術です。

Plasma: Scalable Autonomous Smart Contracts

  • シャーディング

ノード群と処理するトランザクションをそれぞれいくつかのグループに分け、それぞれのノードグループがある特定のトランザクション群を処理するようにする技術です。

たとえば、0x00で始まるすべてのアドレスを1つのシャードに入れ、0x01で始まるすべてのアドレスを別のシャードに入れて処理するといった実装です。

github.com

そのほかにも、Proof of Stake実装による解決策などが挙げられ、そのためのCasperアップデートなどについても言及されました。

これらでスケーラビリティが解決されれば、Ethereum上でのDapps開発、ユーザー利用はより容易になるでしょう。

イベントで見えたこと-2.Ethereumを現実に応用するための技術開発の推奨

ブロックチェーンデータはほぼ改竄できないとして言われています。

しかしながら、チェーン外からの内容について検証する術を持ちません。

何らかのデータがそもそもチェーンに書き込む直前に改竄がされていた場合、ブロックチェーンには「改竄された記録」が「改竄されない記録」として残ってしまいます。

これを「オラクル問題」といいます。オラクル問題に対応するため、チェーン外からの書き込みが正しいものか検証するための技術としてOraclizeやWitnetと言われるプロジェクトが走っています。

www.oraclize.it

witnet.io

オラクル問題が解決されれば、IoTによる入力や位置情報の入力、セキュリティ事項に関するデータ入力といったところにも対応しやすいと思います。

Ethereumの応用を推し進めるファクターになるでしょう。

イベントで見えたこと- まとめ

残念ながら時間がなく途中退席してしまったのですが、非常に盛り上がり、Ethereumに対する熱気が非常に感じ取れました。イベントではFundの出資対象となったプロジェクトも発表されたので、これらも引き続きウォッチしていきたいと思います。

全体としては現実社会への応用、キーとなってくる技術が意識されている印象で、Ethereumは次のステージに入った様に思いました。

Ethereumはスケーラビリティという問題についていくつもソリューションを開発しており、現実世界に適用するためのソリューションなども生み出しています。

Ethereumを利用したDappsやプロジェクトがこれからどんどん推し進められる様に感じました。一方でまだまだEthereumエンジニアは少ない状態です。

特に、Plasma, Raiden, Oraclizeなどといったスケーリング、現実との接点という技術はアプリ開発時に必要とされる様に思うので、この辺りは特に重要技術としてトラックしていった方が良い様に感じました。

ブロックチェーンエンジニアはこれからどんどん増えてくると思いますが、将来的にはICOコントラクトが書ける等だけでなく上記の様な技術も理解してサービス設計できるエンジニアが特に必要とされていくのではないかと思いました。

全く他人事でないので、勉強していきます。