2025年に読んで良かった本・見て良かったコンテンツを紹介します。
ゲームクリエイター 宮本茂 世界を変えたゲームづくりの思想とアイデア
一位は圧倒的にこれです。ゼルダ・マリオなどを生んだ任天堂のクリエイターである宮本茂さんのことをまとめた本です。これはアメリカのデザイン研究者が宮本茂さんのことを10年以上前にアメリカで出版した本が2025年に翻訳されて日本で出版されました。
個人開発でB2CアプリをやってみたのでB2Cのクリエイター、とりわけ任天堂のものづくりを調べていました。特に宮本茂さんの話は面白く、
- 「既存のジャンルに沿って面白くする」とどうしても「労働」的な作業が増えるので、「新しいジャンルを作る」ほうが良いのではないか

- 新しい技術をふんだんに使って戦うのではなく、古い技術でコストを抑えつつ、いかに面白く活かすか、「枯れた技術の水平思考」の考え方
- ゲームはメインストーリーに関わるのが70%、寄り道が30%ほどのバランスで作る
- みんなで「どうやったらクリアできるのか」と話し合うようなリアルなコミュニケーションが生まれることを見越して「ゼルダの伝説」はデザインされた
- 面白さを形作る部分が最新の技術や映像であるという場合に、クリエイターはそこの要素技術や映像をわかっていないと見積もりがずれやすくなってしまう
など、現在のWEB開発の大事なことを数十年前に何周も前に解説されているように思います。9月には「プロダクトマネージャーにエンジニアリングスキルが必要か」について、こちらの本の引用をしてポストをしました。
PdMにエンジニアリングスキルが必要かについてしばしば話題に上がるが、任天堂の宮本茂さんが技術要素が体験に与える重要性を語っている事は参考になる。…
— Nao Hanamura (@naobit_) 2025年9月23日
合わせて、Game Developer Conferenceでの宮本茂さんの基調講演もおすすめです。1999年のものですが、今でも新しい内容です。
ゼルダの伝説 ティアーズオブ ザ キングダム
今更ですが、2025年にティアキンをやりました。こちらも任天堂ですが、枯れた技術をいかに使うかという「枯れた技術の水平思考」に加えて、現代では最新技術もうまく下支えに使っているように思います。
物理演算の拡張によるハイラル全体で統一された物理システム(火・風・重力・水流)の、地上・空・地下がロードほぼなしでつながっているシームレスなワールド構成…と最新技術を使いつつ、でも「ブロック遊び」や「工作」という昔からある遊びの根本を表現しています。
例えば「ウルトラハンド」という今作の特殊技能でパーツをくっつけて物を作る、レゴ・積み木・プラモデルのような体験のデジタル転用をうまく実現しています。
ある種、「枯れた遊び」を最新デジタル技術で支えているような面白さもありました。
組織のネコという働き方
本屋で見つけて読んでみたのですが、とても面白い。 組織内の役割を4象限に分けて説明しており、
- 組織のビジョンに従順なイヌ
- イヌをたくさん束ねて成果を出すライオン
- 自分軸で動き、パフォーマンスが高い突出したアウトローであるトラ
- トラほどではないが自分軸で動くネコ
と4種類の動物に例えています。(ライオンもネコ科というツッコミはさておき)群れで動くイヌやライオンは組織の王道で目立って評価されやすいが、パフォーマンスが高ければ単独で動くトラも組織の脇道で評価されています。この本では、トラほどパフォーマンスが高くなくともそんな働き方が許されるネコのような働き方もあってもいいのではないか、と書いています。キャリアや組織内の立ち位置、自分の性格など考えたい時におすすめです。
クララとお日さま
ノーベル文学賞作家のカズオ・イシグロの「クララとお日さま」です。2025年はAIパートナーのアプリを個人開発していたこともあり、AIパートナーを題材にしている小説を読み耽っていました。
「人工親友(Artifical Friend)」としてのアンドロイドが一般的になっている世界線で病弱な女の子に買われて一緒に暮らしはじめるクララ。
人間より人間らしいクララと、逆に人間が機械的になっていくような世界線。その中でもクララの人工知能モデルは最新型ではないが、情緒を理解することには最新型よりも長けていると言われるような流れは、2025年にあったGPT-4oとGPT-5との評価を思い浮かべます。ラストシーンまで非常に示唆的でした。
おわりに
2025年は少しこれまでと違った方向性のものをインプットしていました。ゲームデザインであったり、小説であったり、とても充実していたように思います。2025年は個人開発をしていたこともあり、これらを読んで思ったのはものづくりにおいて「世界観を表現する」ことの重要性です。
同じような機能、同じようなスペックの製品があったとしても、クリエイターの世界観が表現されているかどうかでユーザー体験は全く変わってくるように思います。個人開発では世界観を表現することですし、チームで仕事をする際には事業開発のオーナーシップを持つ人の世界観をいかに表現してもらうか、ということも大事です。(2025年は新規事業オーナーを擁立してサポートする役割もやりました)
そういった意味で、世界観を表現し続けている、あるいは一歩引いて誰かの世界観の表現をサポートし続けているクリエイターはすごいなと思うわけです。



